「MICE(マイス)」という言葉、ニュースやビジネスシーンで耳にするけれど、「正直、あまりよく分かっていない…」と感じていませんか? MICEは、私たちの身近なイベントや経済活動と深く関わっている、とても重要なキーワードです。
この記事では、「MICEって何?」という疑問をお持ちのあなたへ、その言葉の意味から、具体的にどんなイベントがMICEにあたるのか、そして日本国内のどこでMICEが開催されているのかまで、豊富な例を交えながら一つひとつ丁寧に解説していきます。
MICE(マイス)とは?4つの要素と意味
MICE(マイス)とは、特定の目的のために多くの人が集まるビジネスイベントの総称です。以下の4つの英単語の頭文字を組み合わせた造語で、それぞれがMICEを構成する大切な要素です。
- Meeting(ミーティング):企業の会議、研修など
- Incentive(インセンティブ):報奨・研修旅行
- Convention(コンベンション):国際会議、学会、大会、学術会議など
- Exhibition / Event(エキシビション/イベント):展示会、見本市、イベントなど
一つずつ、具体的な例を挙げて見ていきましょう。
Meeting/ミーティング(会議・研修)
企業が主催する会議や研修、セミナーなどを指します。社内で行う小さな打ち合わせから、社外の会場を借りて行う大規模なものまで様々です。
▼具体例
- 全社員が一同に会する「キックオフミーティング」
- 新製品の情報を共有する「新製品発表会」
- 全国の販売代理店を集めて行う「ディーラー会議」
- 新入社員向けの「社員研修」
Incentive/インセンティブ(報奨・研修旅行)
企業が、優秀な成績を収めた社員や販売代理店などを表彰し、報いるために招待する旅行のことです。「インセンティブツアー(インセンティブ旅行)」とも呼ばれます。参加者のモチベーションアップや、会社への信頼度や愛着心(ロイヤリティ)を高めることが大きな目的です。
▼具体例
- 年間目標を達成した営業チームの「南国リゾートへの報奨旅行」
- 優秀な社員とその家族を招待する「豪華客船クルーズ」
- チームビルディングを目的とした「九州・沖縄での体験型研修旅行」
Convention/コンベンション(国際会議・学会)
政府機関や国際団体、学術団体などが主催する、大規模で公式な会議を指します。世界中から専門家や政府関係者が集まり、特定のテーマについて議論や発表を行います。
▼具体例
- 主要国の首脳が集まる「G7(主要国首脳会議)」「G20(金融・世界経済に関する首脳会合)」
- アジア太平洋地域の経済協力を協議する「APEC(アジア太平洋経済協力)」
- 世界中の医師や研究者が集まる「国際医学会」
Exhibition / Event /エキシビション/イベント(展示会・見本市・イベント)
特定のテーマに沿った製品やサービスが展示され、商談や情報収集が行われる「展示会・見本市」や、企業が主催するPRイベントなどを指します。一般の消費者も参加できる大規模なものも多くあります。
▼具体例
- 最新の自動車や技術が集結する「JAPAN MOBILITY SHOW(旧:東京モーターショー)」
- IT・エレクトロニクスの国際展示会「CEATEC JAPAN」
- 新作ゲームが体験できる「東京ゲームショウ」
- 企業の創業記念パーティーや、顧客を招いた感謝祭
- 新車展示・試乗会
- フードフェスタ
これら4つの活動は、「多くの人が、同じ目的のために、一つの場所に集まり、交流する」という共通点を持っています。参加者はその地域で宿泊し、食事をとり、お土産を買い、時には観光も楽しみます。
そのため、開催地には非常に大きな経済効果をもたらすことから、国や自治体も積極的に誘致活動を行っており、まとめて「MICE」と呼ばれているのです。
なぜMICEが重要?「企業」と「地域」それぞれのメリット
MICEが重要視されるのは、関係する様々な立場の人々に大きなメリットをもたらすからです。ここでは、MICEを「開催・参加する企業側」と、MICEを「誘致する地域側」の2つの視点に分けて、それぞれのメリットを具体的に解説します。

【企業側】MICEを開催・参加するメリット
まずは、MICEを主催したり、社員が参加したりする企業にとって、どのような良いことがあるのでしょうか。
新たなビジネスチャンスの創出
展示会への出展や、業界のカンファレンスへの参加は、新しい顧客やビジネスパートナーと出会う絶好の機会です。自社の製品やサービスを直接アピールできるだけでなく、業界の最新動向を肌で感じ、新たな事業のヒントを得ることもできます。
普段はメールや電話でしかやり取りできない相手と、対面で関係を深められるのも大きな利点です。
社員のやる気がアップし、チーム力もアップ
社内向けのMICE(MeetingやIncentive)は、組織を活性化させる強力なツールです。全社が一堂に会するキックオフイベントは経営方針を共有し、一体感を醸成します。
また、優秀な成績を収めた社員を招待するインセンティブ旅行は、社員の努力に報い、モチベーションを最大限に引き出します。「またあの旅行に行きたいから頑張ろう」という思いは、会社全体の業績向上にも繋がります。
会社の知名度が向上
先進的なテーマでカンファレンスやセミナーを主催することは、その分野における企業の専門性やリーダーシップを社外に示す強力なブランディング活動となります。
メディアに取り上げられれば、企業の知名度は一気に向上します。参加者にとって有益な情報を提供することで、「あの会社は業界をリードしている信頼できる企業だ」という評価を獲得できるのです。
【地域側】MICEを誘致・開催するメリット
次に、MICEが開催される都市や地域(開催地)には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
地域経済が活性化し経済効果大
MICEの参加者は、会議やイベントに参加するだけでなく、その土地に宿泊し、食事をし、交通機関を利用し、お土産を買ったり観光を楽しんだりします。
一人ひとりの消費額が大きいため、大規模なMICEが開催されると、ホテル、飲食店、小売店、交通会社など、地域の幅広い産業が潤います。これは、地域経済全体にとって非常に大きなプラスの効果となります。
都市の知名度やイメージアップ
G7サミットのような国際会議が開催されると、その都市の名前は世界中のニュースで報じられます。これにより、都市の知名度やイメージが飛躍的に向上し、「国際的な都市」「安全で魅力的な都市」というブランドが確立されます。
これは、MICEだけでなく、その後の一般観光客の誘致にも繋がり、長期的な地域の発展に貢献します。
すごいアイデアや技術が集まり街も発展
国際学会や専門的な技術展示会が開催されると、世界中から最先端の知識や情報、そして優秀な人材がその地域に集結します。地元の大学や研究機関、企業がその「知」に触れることで、新たな研究開発やイノベーションが生まれるきっかけになります。
地域が「知の集積地」として発展していくための、重要な起爆剤となり得るのです。
MICEはどこで開かれる?会場/施設の種類と代表例
MICEが開催される場所と聞くと、巨大な展示場を思い浮かべるかもしれませんが、その規模や目的に応じて会場は様々です。ここでは、MICEがどんな場所で開かれるのかを、規模に分けて見ていきましょう。
【小規模〜中規模】身近な貸し会議室やホテル
会社の会議やセミナー、数十人規模のパーティーなど、比較的小規模・中規模のMICEは、私たちにとって身近な場所でも開催されています。
レンタルスペース・貸し会議室
数人規模の打ち合わせから100名程度のセミナーまで、時間単位で手軽に借りられるのが魅力です。駅の近くなど便利な場所に多く、社内会議や研修、小規模なセミナーなどに最適です。
ホテルの宴会場・会議室
数十人から数百人規模のイベントに対応できます。宿泊施設が併設されているため、遠方からの参加者が多いイベントに便利です。格式のある会議や、企業の記念パーティー、表彰式といった華やかな場にもよく利用されます。
【大規模】地域を代表する巨大コンベンションセンター
数千人から時には数万人もの人々が集まる国際会議や大規模な展示会は、「コンベンションセンター」や「国際展示場」と呼ばれる巨大なMICE専門施設で開催されます。これらは各エリアを代表するランドマークにもなっています。
【関東エリア】
日本のMICEを牽引する、世界有数の施設が集まっています。
- 東京ビッグサイト(東京都):逆三角形の会議棟が象徴的な日本最大のコンベンションセンター。
- 幕張メッセ(千葉県):広大な展示ホールと国際会議場、イベントホールを備えます。
- パシフィコ横浜(神奈川県):美しい港の景色と一体化した複合MICE施設です。
【東海エリア】
日本の真ん中に位置し、国際的な産業イベントが多く開催されます。
- 愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo):国際空港の隣という抜群のアクセスを誇ります。
- ポートメッセなごや(愛知県):金城ふ頭エリアに位置する大規模な国際展示場です。
【関西エリア】
歴史と文化が息づくエリアにも、大規模なMICE施設が揃っています。
- インテックス大阪(大阪府):西日本最大級の国際展示場で、様々な見本市が開かれます。
- 神戸コンベンションセンター(兵庫県):複数の施設が集まり、多様なイベントに対応可能です。
- 国立京都国際会館(京都府):日本で最初の国立の会議施設で、数々の歴史的な国際会議の舞台となってきました。
【九州エリア】
九州エリアはアジアへの玄関口として、国際的な交流の拠点となっています。
- シーガイアコンベンションセンター(宮崎県):宿泊施設であるフェニックス・シーガイア・オーシャン・タワーに隣接した施設で、国際会議なども開催されるリゾート型MICEの代表格です。
- マリンメッセ福岡(福岡県):展示機能のほか、アリーナとしてコンサートなどにも利用されます。
- 福岡国際会議場(福岡県):博多港エリアに位置し、大型の会議に対応します。
【四国エリア】
地域に根ざした特色あるMICEが開催されています。
- サンメッセ香川(香川県):大小の展示場や会議室を備える、香川県の中核的なMICE施設です。
- アイテムえひめ(愛媛県):多目的な利用が可能な展示場やホールがあります。
【その他】特別な体験を生む「ユニークベニュー」
近年、特に注目を集めているのが「ユニークベニュー(Unique Venue)」です。これは、MICE専門施設ではないものの、その地域ならではの特別な魅力を持つ会場のことを指します。非日常的な空間でのイベントは、参加者の記憶に深く残り、満足度を飛躍的に高める効果があります。
参考:国土交通省「ユニークベニュー | MICE開催地としての地域の魅力向上・発信」
参考:日本政府観光局「ユニークベニュー」
ユニークベニューの具体例
- 歴史的建造物・城: 京都の二条城、姫路城など
- 美術館・博物館: 東京国立博物館、金沢21世紀美術館など
- 庭園・公園: 新宿御苑、浜離宮恩賜庭園など
- 寺社仏閣: 高野山や京都の寺院など(レセプション等で活用される場合がある)
- その他: 水族館、劇場、迎賓館、料亭など
会議は専門施設で行い、その後の懇親会(レセプションパーティー)をユニークベニューで開催する、といった組み合わせも人気です。
日本のMICEの現状と今後
MICEが持つ大きなメリットから、日本は国を挙げてその誘致・開催に力を入れています。ここでは、日本のMICEが世界の中でどのような状況にあり、今後どこを目指しているのか、その現状と未来像を見ていきましょう。
日本のMICE開催状況と経済への影響
国際会議の開催件数を見ても日本は世界トップクラスの開催実績を誇ります。
MICEがもたらす経済効果は非常に大きく、参加者が会議の参加費や交通費、宿泊、飲食、観光、買い物などに使うお金は、地域経済を大きく潤します。
特に、海外から来る参加者の一人当たりの消費額は、一般的な観光客よりも高い傾向にあり、MICEは単なるイベント以上に地域経済の成長に貢献する魅力的なイベントとして注目されています。
国も後押し!観光庁の取り組み
日本政府(観光庁)は、MICEを日本の成長戦略の重要な柱の一つと位置づけています。具体的な目標として「2025年までにアジアNo.1の国際会議開催国としての地位を確立する」ことを掲げ、様々な取り組みを行っています。
その中心的な施策が「グローバルMICE都市」の育成です。札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡など、国際的なMICEを牽引できるポテンシャルを持つ都市を選定し、誘致活動への支援や、海外へのプロモーション活動などを重点的に行うことで、日本のMICE全体の競争力を高めようとしています。
日本が秘める大きなポテンシャル
日本には、世界からMICE開催地として選ばれる多くの魅力と可能性があります。
- 参加者が安心して滞在できる高い安全性と清潔さ
- 国内の移動がスムーズで正確な発達した交通網
- 豊かな食文化と観光資源で会議前後の楽しみが豊富
- 世界トップレベルの研究・産業で専門性の高い国際会議を誘致しやすい
- 「おもてなし」の心で参加者に高い満足度を提供できる
これらの強みに加え、「ユニークベニュー」や「サステナビリティ」といった新しい価値を提供することで、日本のMICEは今後さらに世界での存在感を増していくことが期待されています。
MICEとサステナビリティ(持続可能性)
近年、世界的に「サステナビリティ」への関心が高まっており、その考え方はMICEの世界でも非常に重要になっています。サステナブルなMICEとは、環境や社会、経済に配慮した持続可能なイベントのあり方を指します。
【サステナブルなMICEの取り組み例】
- 環境への配慮
資料のペーパーレス化、マイボトル持参の推奨、フードロスを減らす工夫、再生可能エネルギーの利用など。
- 社会への貢献
地元の食材を積極的に利用する(地産地消)、地域の文化体験プログラムを取り入れる、イベントの収益の一部を地域に寄付するなど。
こうした取り組みは、地球環境に貢献するだけでなく、参加者や社会からの共感を得て、主催する企業や都市のブランドイメージを向上させる効果もあります。これからのMICEは、「環境や社会に良いこと」が、イベントの成功を左右する重要な要素の一つになっていくのです。
九州・宮崎「シーガイア」に学ぶ、リゾートMICEという選択肢
これまで様々なMICEの形を見てきましたが、最後に少し特別な事例として、九州・宮崎にある統合型リゾート「フェニックス・シーガイア・リゾート」をご紹介します。ここは、MICEの新たな可能性を感じさせてくれる「リゾートMICE」の国内最高峰の拠点です。
会議も宿泊も食事もすべてが一つに。一体型MICE施設の圧倒的な利便性
シーガイアの最大の強みは、MICEに必要な機能がすべて一つの広大なリゾート内に揃っていることです。
イベントの中核を担うのが、最大5,000名もの人々を収容できる国際レベルの会議施設「シーガイアコンベンションセンター」です。大規模な全体会が可能なメインホールから、少人数での分科会に最適な会議室まで、大小様々な会場が揃っており、あらゆる規模・目的のイベントに柔軟に対応することができます。
そして、そのコンベンションセンターに隣接してたたずむのが、ラグジュアリーホテルの「フェニックス・シーガイア・オーシャン・タワー」です。700室を超えるゆったりとした客室を備えているため、イベント参加者全員が同じホテルに宿泊することも可能です。
この「一体型」により、参加者は会議、宿泊、食事のための面倒な移動が一切不要になります。イベント期間中、参加者同士が自然と顔を合わせる機会が増え、一体感の醸成にも繋がるのが大きな魅力です。
実際の開催事例から見る「リゾートMICE」の価値
では、実際にシーガイアではどのようなMICEが開催されているのでしょうか。事例をご紹介します。
事例1:国の重要会議も開催される信頼性(G7宮崎農業大臣会合)
2000年に外相会合が、2023年には日本が議長国を務めた「G7」の農業大臣会合がシーガイアで開催されました。世界各国の要人を迎えるには、最高水準のセキュリティ、運営能力、そして「おもてなし」が求められます。シーガイアは、この国家的プロジェクトを成功させ、国際会議の舞台として申し分ない実力があることを世界に証明しました。
事例2:仕事と遊びを最高レベルで融合させたインセンティブツアー
ある企業では、成績優秀な社員を招いたインセンティブツアー(報奨旅行)をシーガイアで実施しました。
- 日中
最新設備が整った会議室で、次年度に向けた研修やワークショップを実施。
- アフターMICE
午後は世界トップクラスのゴルフコースで汗を流したり、スパで心身を癒したりと、思い思いのリフレッシュタイムを満喫。
- 夜
ライトアップされた美しいガーデンで、宮崎の豊富な食材を使ったBBQパーティーを開催し、チームの絆を深める。
このように、質の高い「仕事」と、リゾートならではの特別な「遊び(体験)」をシームレスに組み合わせられるのがリゾートMICEの醍醐味です。参加者にとっては忘れられない思い出となり、仕事へのモチベーションを飛躍的に高める効果が期待できます。
他にも企業のチームビルディングから国際会議まで、専任のスタッフがご要望に合わせた最適なプランをご提案します。企画の初期段階でも構いませんので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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よくある質問
- MICEとはなんですか?
- MICEとは、Meeting(会議)、Incentive(報奨旅行)、Conference(学会)、Exhibition(展示会)の頭文字を取ったビジネスイベントの総称です。企業や団体が主催し、地域に経済効果をもたらす集客型イベントとして注目されています。
- 日本で行われた代表的なMICEはなんですか?
- 日本の代表的なMICEの例として、G7広島サミット(2023年開催)があります。これは各国首脳が集まる大規模な国際会議(Conference)で、日本が主催し、世界中からメディアや関係者が集まりました。宿泊・交通・警備・通訳など多方面にわたり経済効果や地域PRにも貢献した代表的なMICE事例です。